焼酎

焼酎とは

一般に、「焼酎」という言葉は日本の伝統的な蒸留酒を指す。標準的な製造法では、焼酎麹を用いて米、麦などの穀類や甘露に含まれるデンプンを糖化させ、焼酎酵母で発酵させたもろみを単式蒸留器で蒸留して製造される。麹と主原料が異なる場合もあるが、主原料の名をつけて呼ばれる。泡盛は原料の米全量を黒麹にする点が特徴である。黒糖焼酎は黒糖(黒砂糖)を原料として造られ糖化の必要はないが、ラム酒と区別するため、麹を使用することが必須とされている。これらを単式蒸留焼酎(乙類)と呼ぶ。
 これに対して、梅酒や酎ハイなどの原料として用いられるホワイトリカーも酒税法上の焼酎に含まれ、連続式蒸留焼酎(甲類)と呼ばれる。

焼酎の造り方

焼酎には蒸留工程があることが日本酒との大きな違いである。そのほかに主な違いとして、

・焼酎では、日本酒の酒母の工程を一時醪と呼び、醪の工程をにじ醪と呼ぶ。
・焼酎では、麹の全量を一次醪に入れる。
・芋などの主原料は二次醪だけに入れる。
・乳酸を必要とせず、発酵温度も高い。
・こす(上槽)の工程が焼酎にはない。

日本酒用のこうじは米麹のみであるが、焼酎麹は米麴、麦麴、芋麴がある。

米と麦の原料処理

焼酎蔵には、回転ドラム式自動製麹機と呼ばれる、設置面積が少なく多機能な装置が普及している。ドラムは、ドラムの側面に局部的にスリットや取り出し口があり、中心に回転軸のシャフトのある横型ドラムとなっている。ドラムの回転位置次第で、洗米(洗麦)、浸漬、蒸きょう、製麹(前半のみが多い)までの作業が1台の機械でできる。

・ドラムの扉から米や麦などの原料を入れ、閉める。
・ドラムを適正な角度まで回転させる。
・内部のシャフト(軸)部分に沿って水の噴出し口があり、洗米(洗麦)を行う。
・ドラムのスリット部分を天井にして、浸漬する。
・180度回転で水切り。麹用の浸漬米、浸漬麦は、ここで適正水分にもっていく。
・ドラムは内壁がステンレス製で、断熱性のある四角い小部屋の中に設置されている。蒸きょうの際は、この小部屋の扉を閉めて蒸す。ドラム内のシャフトに沿って、蒸気吹き出し口がある。

製麹

ドラムで蒸上がり後、蒸米が適度に冷めたら、数回に分けて、種切を行い、胞子が発芽しやすいように、湿度が高く暖かい環境に1日置くために、ドラムを設置した小部屋の扉を閉める。
 製麹2日目は、三角棚と呼ばれる半自動製麴機に移すところとそのまま製麹を最後まで続けるところがある。
 三角棚の中は、比較的短時間に品温が40℃に到達するが、後半は35度以下を目標に送風冷却を行う。クエン酸をたくさん作る温度帯だからである。
 製麹期間のうち棚期間(三角棚)は1日弱で終了である。
 麦の原料処理や製麹に関しても、米と同様な操作が行われる。

焼酎麹の特徴

焼酎麹には、黒麹、白麹がある。麹が胞子を付けた場合の胞子の色の違いである。
 白麹菌は黒麴菌の突然変異で得られたもので両者は同じ仲間に属するが、黄麹菌とは種類が異なる。以前は、黒麹菌はアスペルギルス・アワモリ、白麹菌はアスペルギルス・カワチの学者名が使われることが多かったが、現在は両者ともアスペルギルス・リューキューエンシスと呼ばれている。
 焼酎麹の役割としては、酵素を生産し、原料に含まれるデンプン等を分解して酵母が利用・発酵できるようにすることに加え、クエン酸をたくさん生産することも重要である。日本酒では酒母の乳酸が雑菌汚染の防止に重要な働きをするが、焼酎では焼酎麹のクエン酸が同様の働きをしている。また、焼酎麹の酵素は比較的強い酸性でもよく働く特性がある。
 米麴用には、一般に精米歩合90%程度の白米が用いられ、回転ドラム式の製麹に適した粘りの少ない品種が適している。

芋の原料処理

甘露は、秋に収穫され、概して収穫後数日で傷みはじめ、貯蔵には高額な施設を要するので、できるだけ早く使用する。そのため、芋の収穫に合わせて、芋焼酎は秋に製造される。
 芋を蒸す前に、大人数で、苦味の原因になる芋の傷んだ部分を切除する。これをトリミングという。次に、芋を2つに裁断して、芋の中心部の線虫や霜の被害などを確認しながら、芋の選別を行う。芋の尻尾を切除する焼酎蔵は多い。
 芋の洗浄については、トリミング作業の前に機会を使ってブラシとシャワーで洗う蔵もあれば、トリミング作業の後に洗浄を行う焼酎蔵もある。
 芋焼酎の場合蒸し機が独特である。芋を蒸す途中で芋に大量の結露水が発生するため、この水を抜くために蒸気は上から吹き込む。芋を蒸すにはこめよりじかんがかかる。
 蒸された芋は、そのままでは醪で表面数ミリしか溶けないので、破砕機(粗いスライサー相当)で幅1cm以下に破砕される。
 破砕された蒸し芋は、ホースで、水と一緒に二次醪へ運ばれる。

一次醪

一次醪とは、日本酒の酒母に相当し、健全な酵母を大量に培養するのが主な目的である。水に麹の全量を加え、酵母を添加する。焼酎の一次醪は麹由来のクエン酸が大量に含まれているため、ワインの醪と同様に乳酸菌等の酵母以外の微生物が生育しにくい環境である。
 一次醪の外観は清酒の酒母同様、粥様である。
 概して、一次醪は醪日数6日位で、最高温度30℃位で酵母を増殖・発酵させる。

差し酛

最初の醪数本は純粋培養酵母で仕込むが、多くの焼酎蔵では、差し酛といって、別の一次醪の3~4日目のもの(酵母が十分増殖し、かつ元気がよい)の一部を純粋培養酵母の代わりに使用する。差し酛によって野生酵母の混入のリスクは増えるが、経験的には発酵が順調となり、かつアルコール習得率も向上する。差し酛の回数は数回程度から数十回程度とさまざまである。差し酛を行わない焼酎蔵もある。

焼酎酵母の特徴

焼酎酵母は日本醸造協会のほか、鹿児島県、宮崎県等、主産地の公設試験研究機関で開発、頒布されている。
 遺伝的にはパン酵母やワイン酵母よりも清酒酵母に近いことが明らかにされているが、清酒酵母よりも酸性に強く、高温での発酵に適している等、焼酎醸造に適した性質をもった菌株が選ばれている。

二次醪

一次醪を大きなタンクに移し、残りの仕込み水と蒸煮した主原料を加えて発酵させるものが二次醪である。
 一次醪、二次醪では、清酒醪と同様、糖化と発酵が同時に起こる並行複式発酵の状態である。
 焼酎の醪温度は30℃前後と高い。このためは黄河かなり旺盛であり、醪がタンク内壁に飛び跳ねるほどである。日本酒に比べて醪期間が短い。

蒸留

発酵が終わった二次醪は蒸留機に送られ、蒸留される。蒸留前の二次醪のアルコール分は通常14~20度程度であるが、得られる焼酎のアルコール分は37~43度程度になる。通常、ウイスキーやブランデーでは、2回蒸留(アイリッシュウイスキーでは3回蒸留)されるが、焼酎では多くの場合、1回蒸留である。
 焼酎製造では蒸留時間は3時間が標準であり、このため、アルコール分や香気成分が留出することに加え、加熱による風味が付与される。
 蒸留機の醪を入れる部分を蒸留缶という。一般的には蒸気によって加熱される。アルコールに富んだ蒸気は上方へ、さらには斜めになった管(ワタリ)へ移動するが、出口の手前の冷却管で水冷され、蒸気は液体となり留液すなわち焼酎が得られる。
・最初にアルコール液が出る。
・次第にアルコール度数が低下。
・最後あたりは10度くらい。このあたりで蒸留を中止しないと渋みがでる。

蒸留方法と香味

常圧蒸留:85~95℃の範囲で沸騰。高温によりより多くの成分が留出することに加えて、高温による分解や合成などの化学反応が促進され、留液にも香ばし香味を与える。

減圧蒸留:45~55℃のより低い温度で沸騰。高温による化学反応は抑制され、また、蒸発されにくい成分の留出が少なくなり、軽快なタイプで果物香(エステル)を得やすい。単式蒸留焼酎の減圧蒸留は1970年代初頭に開発された。

貯蔵・熟成・出荷

常圧蒸留の蒸留直後の焼酎は、ガス(硫黄系のにおい、及びアルデヒド臭)が抜けておらず、香りは刺激的で荒々しい。
 貯蔵中にこれらのガス成分が抜け、まろやかな香味になる。
 焼酎の貯蔵は通常原酒(アルコール分37~43度)で行うが、出荷時には市販酒規格の25度や20度程度まで加水する。多くが蒸留後1年以内に出荷される。焼酎が蒸留直後からあらあらしさが少なく、また、樽熟成に由来する香味よりも原料特性を活かした蒸留酒であることが考えられる。

油臭の除去や予防

以前、焼酎は臭いと言われていた主な理由の一つが油臭である。
 こめ、麦、甘露などに含まれる植物性油脂を構成する脂肪酸のバルミチン酸やリノール酸から、醪中で脂肪酸エチルエステルが生成される。これらが、蒸留により留出し、油性成分として貯蔵タンクの表面に浮いてくる。これらが酸化されると油臭(酸化された油の臭い)になる。
 予防するには原因物質の油性成分をろ過や掬い上げにより早期に除去。アルコール分が低かったり、温度が低いほど油性成分は焼酎に溶けにくく除去しやすい。活性炭でも処理できるが、より香りも吸着されてしまう。また、減圧蒸留の場合は油性成分はずっと少ない。
 油性成分はまた、割水中のカルシウムなどを核として結合し、綿状の浮遊物質、つまり、沈殿、濁りを生じることがある。割水前の焼酎に油性成分が多過ぎないことが望ましいだけでなく、割水用水にカルシウムが少ないことも望ましい。

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