愛山 あいやま
1941年に兵庫県の酒造米試験地で「愛船117」を母に、「山雄67」を父に交配させた。育成試験は1951年に打ち切られたが、試験地の地元・加東郡社町(現在の加東市)の一部の農家や集落で栽培が続けられてきた。1980年には産地品種銘柄に指定された。
愛山はデリケートで造りが難しいものの、ゆったりとした奥深さ、繊細さをもつ、優しい味わいの酒になるといわれている。
秋田酒こまち あきたさけこまち
「秋田酒251」を母、「秋田酒306」を父として人口交配した組み合わせの後代から選抜、育成された。2000年に育成を完了。2003年には秋田県の栽培奨励種に採用された。
出穂期・成熟期ともに中生の中。稈長(地面から穂首まで)が美山錦より短く、耐倒伏性は美山錦よりも高い。玄米収量は美山錦並み。
タンパク質が少ないことに加えて、でんぷん質が消化しやすい性質をもつため、雑味がの少ない、上品な旨味と軽快な後味をもつ酒となる。
祝 いわい
1933年に「野条穂」から純系分離された京都生まれの酒米。1990年に農家による栽培再開、1992年に酒の製品化に至った。
「祝」は精米しやすく、低タンパク質で酒造適正の非常に高い、吟醸酒向きの品種。淡麗な味わいと独特の芳香を特徴とし、伏見を中心に京都の酒造で醸されている。
雄町 おまち
9月上旬に出穂、10月下旬に成熟する晩生品種現在栽培されている酒造好適米の中で最も歴史のある品種で、山田錦や五百万石をはじめ、その誕生後に開発・育成された品種には「雄町」を先祖とするものが多い。
1859年、篤農家の岸本甚造は伯耆大山(鳥取)に酸敗した帰途、あぜ道に覆いかぶさるように頭を垂れる、ひときわ重そうな穂を見つけ、ふた穂を譲り受けて持って帰った。それから選別(系統分離)を重ね、1866年に選出もらった2本の穂にちなんで「二本草」と命名したが、この優れた品種の存在を知った人に苗を分配するうちに、育成地である岸本の地元「雄町」という地名で呼ばれるようになる。
当初は飯米として流通するが、大粒で心白も大きい「雄町」は各地の酒造家から酒造米として高い評価を獲得。
酒質:適度な旨味のある酒になる。酒質にまろみがあり、秋上がりする。
吟風 ぎんぷう
「米も水も北海道産」という願いから、北海道では酒造好適米の育種開発を推進、その第一号となったのは2000年採用の「初雫」。続いて「吟風」<2000年>、「彗星」<2006年>、「きたしずく」<2014年>を誕生させ、現在は「吟風」以降の3種が産地品種銘柄となっている。なかでも最も生産量の多い「吟風」は、心白が大きくはっきりしていて、その発言率も高く、いもち病に強い。吟醸酒になるための米をイメージして命名され、芳醇な酒質が期待できるという。
越淡麗 こしたんれい
1989年に新潟県農事試験場において、「山田錦」と「五百万石」を交配。その後、固体選抜や固定、特性の調査を継続し、15年後の2004年に育成を完了した。
「越淡麗」の成熟期は9月29日ごろで、五百万石(9月3日)やコシヒカリ(9月15日)よりも遅く、山田錦(10月2日)よりも早い晩生。大粒で、タンパク質含有量が少なく、精米歩合40%よりも高度な精米にも対応できるのが特徴。
五百万石 ごひゃくまんごく
1938年、当時の新潟県農事試験場で交配(菊水×新200号)により生み出されたが、戦争を挟み、初の試験醸造は1956年になってから。翌1957年に命名された。新潟産米の生産数量が500万石(一石=150kg)を突破、それを記念してのものだった。
寒冷地向けに開発された早生品種で、大粒で心白がある。蒸しあげたときに粘らず(「さばけがよい」と表現される)、外硬内軟の理想的な蒸米に仕上がるため、麴が造りやすい。米質はやや硬く、溶けにくい。それが早生品種の酒造米を代表する「五百万石」の特徴のひとつであり、結果、淡麗でさわやかな酒質を生む傾向があり、強みとなっている。「淡麗辛口」という酒質は、「五百万石」の開発があったからこそ実現できたとも言われている。
総生産量の50%弱を占める新潟をはじめ、富山、福井、石川の北陸地方を中心に、1府20県が栽培している(令和2年産米の農産物検査結果)
出羽燦々 でわさんさん
1985年に山形県立農業試験所庄内支場において、「美山錦」を母に、「青系97号(のちの花吹雪)」を父として交配・育成された。品種登録は1997年。育成地(山形市)における成熟期は、「美山錦」よりも2日程度遅い中生の中。玄米千粒重は「美山錦」よりもやや重く、心白発現率が高い。
山形県では、「出羽燦々」を精米歩合55%以下まで磨き、山形酵母と山形オリジナルの麹菌「オリーゼ山形」を用いて醸した純米吟醸酒に対して審査を行い、「DEWA33」の称号と「純正山形酒審査会認定証」を与える独自の企画も展開している。味わいは柔らかくて、幅がある。
八反系 はったんけい
現在、広島県は八反系では「八反」(正式には「八反35号」)と「八反錦1号」を県の産地品種銘柄に指定している。八反系のルーツは「八反草」である。その後、「八反草」は姿を刑したが、「八反10号」、「八反35号」、「八反40号」が生み出され、「八反草」の遺伝子が引き継がれていった。
「八反10号」は「八反草」からの系統育成。「八反35号」は「秀峰」を母、「八反10号」を父とする。「八反錦1号」と「八反錦2号」はいずれも、「八反35号」と「アキツホ」を交配して育成された姉妹品種で、1983年に品種登録された。
「八反錦」では、「八反」の収量の低さが改善され、玄米は大粒で千粒重も大。心白発現率も高い。1号は広島県内の標高200~400m地帯、2号は同標高400m前後と、より高地での栽培に向く。「八反系」(八反、八反錦)を現代的なすっきり美人タイプの酒に例えられている。
ひとごこち
長野県農事試験場において、「信交酒437号(のちの白妙錦)を母」、「信交444号」を父として1987年に交配・育成された品種で、1997年に品種登録を行った。
「美山錦」よりも栽培特性に優れ、高級酒への対応が容易な米をつくるために開発された。「美山錦」よりも玄米千粒重が大きく、心白率、心白発言率ともより高く良質。腹白米や銅割れの発生は少ない。成熟期は「美山錦」とほぼ同じ、中生の中。収量はより多い。出来上がる酒は淡麗で、味に幅があるといわれている。
美山錦 みやまにしき
1978年、長野農事試験場にて「たかね錦」の種籾にγ線を照射して生み出された突然変異種。大粒で豊満かつ心白発言率のよい品種。
「美山錦」は耐冷性があるため主に東日本へと広がり、長野のほか、秋田、山形、福島、宮城などが主な産地。また、「出羽燦々」(山形県、美山錦×華吹雪)や「越の雫」(福井県、兵庫北錦×美山錦)、「秋の精」(秋田県、トヨニシキ×美山錦)など北の他県が開発した品種の親株にもなっている。
次回は、酒米の王様とも呼ばれる「山田錦」について深掘りしていきます🌾👑
なぜそんなに人気なの?どんな特徴があるの?気になるその秘密に迫ります!お楽しみに🍶✨
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